「ドイツを代表する駄菓子」といえば?!
ハリボのグミ!でしょう!

ドイツ国民一人頭の年間消費量は約6kg弱で、チョコレートやクッキー類に次いで人気のお菓子。1年間で6kg、1日換算で16g。案外大した量じゃないな、と思ったあなたは、多分ドイツのグミにどっぷりハマっているのかもしれません。

ちなみに私も、渡独してからほぼ毎日ハリボのグミを1袋(200g)ほど消費しており、しまいに医者にかかって栄養失調と診断されたことがあります……。美味しいですが、何事もほどほどが重要ですね。

●ドイツ駄菓子界のスター

Fabrikverkauf bei Haribo in Bonn; 出典: © Haribo

さて、ドイツ駄菓子界におけるグミの地位は非常に高い。まず驚くのがスーパーのグミコーナーの充実度です。店によってはお菓子コーナーの半分くらいがグミで、入り口近くにあったりするので、グミを見ずに通り過ぎるのは至難の技だったりします。デパートでは量り売りが充実していて、袋物にはない大型のグミが手に入ります。ドイツにおけるコンビニ的存在の深夜営業のお店やガソリンスタンドにも必ず数種類のグミがありますし、見本市に行けば会社のロゴが入った小袋を配られ、ホテルの枕の上や、銀行の窓口、ツーリストインフォメーションなど、ドイツでは、ありとあらゆる場所にグミが存在するのです。

●ハリボは、2020年に創業100周年!

出典: © obs/HARIBO GmbH & Co. KG

実はゼラチンを使ったグミキャンディーの発祥地はドイツではなく、イギリスという説が濃厚ですが(20世紀初頭、鉄道旅行の際に気軽に携帯できるお菓子をと開発されたらしい)ドイツで一番早くグミキャンディーを作ったのは「ハリボ」さん。

学校では教えてくれないドイツ語 Vol. 13 でも取り上げましたが、ハンス・リーゲルさんが西ドイツ、ボンで始めた、HA(ns) RI(egel) BO(nn) ハ・リ・ボ、創業は1920年です。そう、ハリボは来年が創業100周年!!!

90周年の際には、これまでの歴史的なパッケージを復刻した限定版が販売されたのですが、100周年にはどんなプロジェクトが行われるのか……まだ秘密だそうです。

●金熊グミ

出典: © 河内秀子

毎年のように登場する新作を含め、20種類以上が存在するハリボのグミ。中でも最も人気があるのがゴールデンベアー、熊の形をしたフルーツグミです。

その歴史は古く、創業2年目の1922年に遡ります。当時人気だった「踊る熊」というアトラクションからアイデアを得たハンス・リーゲルさんが、踊る熊をかたどったグミを作ったのが始まりです。

いまも首にリボンを巻いたハリボの金熊くん(黄色いですが)は、時代の変化とともに少しずつマイナーチェンジしつつも、さまざまなパッケージに登場する「ハリボの顔」、マスコット的な存在として活躍しています。

最近では、シュガーレスのフルーティーなタイプが人気のよう。

●ハリボくん

出典: © 河内秀子

金熊くんと並んで、パッケージに登場することもあるのがおかっぱ頭の少年、ハリボくん。黒髪のせいか、ドイツでは主に真っ黒なグミ、ラクリッツ(リコリス)のパッケージに登場することが多く、いまいち影が薄い彼なのですが、隣国フランスではロゴからして彼がメインで、しかもちょっと顔が今風?に立体的にアレンジされていたりするのが興味深いです。

ドイツのハリボグッズは金熊くんメインですが、フランスではハリボくんのものも色々揃っています。こういった国ごとの違いが面白くて、ほかの国に行くとついスーパーのグミチェックをしてしまいますが、各国で味、形、サイズなど、ドイツにはないハリボ・グミが色々見つかって面白いです。
トルコにはまだ行ったことがないですが、ベルリンのトルコ食材店では、ちゃんとイスラム法に準じたハラールのグミが売っています!(ゼラチンは豚から取れるので、ゼラチン不使用のもの)

●イースターのうさぎグミ

出典: © 河内秀子

カーニバルが終わると、ドイツはイースター商戦一色。(今年は4月18日から22日まで)スーパーマーケットにもイースターエッグや卵型のチョコレートなどがズラリと並びますが、もちろんグミもイースター限定版が登場します!

以前は、HARIBOゴールドベアーグミの熊が、味もそのまま形がうさぎに入れ代わったの「ゴールヘースヒェン(金ウサギ)」や、イースターエッグやラッパズイセンなどを象った凝った形のものを出していたのですが(2007年のイースターグミレポート)いまは、卵型のジェリービーンズなどがメイン。今年はひよこと卵の形のグミを入れた新作が出ているようです。

●ハリボさんのよくわからないデザインセンス

出典: © 河内秀子

しかし、毎年のように新作を生み出すハリボ。そのデザインチームは一体どういう風に仕事をしているのでしょうか。ハリボ社へ直接問い合わせてみたのですが、残念ながらこれについての回答は得られず。手堅い売れ線(クマやコーラ)などを少しずつ変えるだけではなく、突然どぎついジョークを形にしたグミが出たり、やたらと凝った形のものが出たり。誰がデザインし、どうやって商品化への決定が下されているのか……商品の背景がとても気になります。

出典: Twitter

例えば、お尻型のマシュマロのグミに、カラフルなフルーツグミの耳がついた”A… mit Ohren“ (『Arschloch ケツの穴』という人を罵倒する言葉がありますが、それと意味はほぼ同じ『あいつは尻に耳がついたような奴』)を立体化したジョークグミ。これが650g入りのバケツに入っている様子は壮観でしたが、2010年前後に姿を消しました。

出典: © 河内秀子

W杯やUEFA欧州選手権のたびに店頭に並ぶ、ハリボくんが大活躍のサッカーグミや、空港のショップメインで展開しているドイツの観光名所を象ったグミ「HAPPY GERMANY」などは、細部まで凝った作りで、ほかのグミより作るのが大変なんじゃないか?いったいどこまで細部をデフォルメするか?など、グミのデザイナーはほかのお菓子にはありえない、様々な問題にぶつかるのではないかと思うのです。

Adventskalender von Haribo; 出典: © 河内秀子

しかしドイツのグミは季節限定商品もいわゆる「旬の食材のお味」というものはなく、味はいつもとほぼ同じ。日本人としては、白アスパラガス味とかクリスマスのスパイス入りとか作ればいいのにと思うのですが、その点は全くブレがありません。あくまでも、見た目で味わう、繊細な味の違いなどは全く眼中にない、まさに駄菓子らしいお菓子と言えるのです。

執筆者:河内秀子
東京都出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中からライターとして活動。雑誌『Pen』や『料理通信』、『Young Germany』『Think the Earth』『Newsweek for WOMAN 』などでもベルリンやドイツの情報を日本へ向けて発信させていただいています。
Twitterで『#日々是独日』ドイツの風景をほぼ毎日アップしています。いまの興味は『#何故ドイツではケーキにフォークを横刺しにするのか問題』。美味しくてフォークを刺してあるケーキを探し歩く毎日です。HPもご覧ください。