ウィーンを訪れる観光客に人気のスポット、フンデルトヴァッサー・ハウス。派手で奇抜なデザインだが「自然と共生する家」を目指した哲学的な建物だ
フンデルトヴァッサー・ハウス(Hundertwassser-Haus)は、芸術家フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーのアイディアで、建築家ヨーゼフ・クラヴィーナ(Joseph Krawina)によって建てられた。
オーストリア人であるフンデルトヴァッサーは、画一化を嫌い、想像力を豊かに働かせた生き生きしたもの、そして独創性を追い求めた。「自然の中に直線は存在しない」として、建築物にも柔らかな曲線を多用し、「家を建てる事によって奪われた地面の代わりに」と、屋上に植物を植えた。
フンデルトヴァッサー・ハウスは、芸術家フンデルトヴァッサーの典型的な作品だと言える。直線が排除され、窓は目のよう。屋根の上には木が生えており、色彩はカラフル。自然に、そして人間らしく、居住する事を可能にする家なのである。
1985年に完成したこの家は30年の時を経て、すっかり傷んでしまったように見える。建物の外観は色あせ、壁は汚れ、木と灌木が屋根からぼうぼうと茂っている。カフェへと続く階段のコンクリートはボロボロで、壁のタイルは剥がれている。
「ここで売っている絵葉書の写真と全然違うじゃないか!」と怒る観光客の気持ちもわかる。
キレイだった頃の姿。

しかしながら、フンデルトヴァッサー・ハウスがピカピカに修復される事を期待しても無駄だ。フンデルトヴァッサーの遺財を管理する団体に、改装する気は全くない。
フンデルトヴァッサーは「年を経て、壁は自然に近づき、より人間的になる」と書き残している。その言葉に従って、手を加えられる事はない。
現在の建物の入り口の様子。

建物のファサード(外観)は、自然の力を借りて初めて完成する。それはごく簡単なこと。壁は朽ちていかなくてはならない。この写真を見ればわかるように、人間だって、美しくも、完璧な姿にも、留まってはいられない。 − フンデルトヴァッサー(1928-2000)

フンデルトヴァッサーの家を色あせる前のカラフルな状態で見てみたいなら、ウィーンから150キロ南にある、バート ブルマウ(Bad Blumau)へ行ってみよう。

フンデルトヴァッサーがデザインしたホテル施設ログナー バート ブルマウ スパ(Rogner Bad Blumau Spa)がある。1997年にオープンしたこのホテルの建物は、手入れがされている。





さて、彼の建築物を実際に見たくなったあなた。なにもオーストリアまで飛んで行く必要はない。日本にもフンデルトヴァッサーがデザインした建物が3つあるのだから。
1. 舞洲スラッジセンター (2004)

2. 大阪市環境局 舞洲工場 (2001)

3. キッズプラザ大阪 (1996/7)

これらの建物は完成してまだ11年から14年だ。自然の力を借りて初めて到達する、フンデルトヴァッサーが目指す「あるべき姿」になっていくかどうかは、建物の所有者次第といったところか。