自ら開発したジェットパックで鳥のように悠々と飛行する “ジェットマン” – イブ・ロッシー
1959年生まれのスイス人、イブ・ロッシーは、 2004年、ジェットエンジンの翼を背中に着装した水平飛行を世界で初めて成功させた人間だ。
元スイス空軍のパイロットで、後にスイス航空で民間飛行機の操縦桿も握っていたロッシーは、自らの経験と技術的知識をもとにエンジンや翼を自宅のアトリエで10年以上かけて開発。
“空を飛ぶのは鳥になった気分で、病みつきになるんだよ”
Yves Rossy / Jetman

ロッシーは、これまでにもドーバー海峡を単独横断したり、グランド・キャニオンを飛行したが、ジブラルタル海峡を横断しようとした時、海に墜落。それを機に、より優れた安定性とコントロールを備えた新しい翼の形状を研究開発。今では、完成した翼を身に纏えば、編隊飛行や曲技飛行もできるようになった。2013年には来日し、富士山の周りを9回も飛行。

富士山の間近を飛行するロッシー
4つのエンジンと2.4m幅の翼が搭載されたジェットスーツの重さは55kg。ドローンやラジコン飛行機に使用されるエンジンと同様のもので、飛行中に高温になるのが難点。そのため、スーツは耐火素材でできており、着陸時にはパラシュートが必要となる。

通常、ロッシーは飛行中に酸素タンクやマスクは着用しない。そのため人が耐えられる寒さで、かつ酸素が十分にある地上1800mの高さまでヘリコプターで上昇し、そこからジャンプして飛行する。バナナのような体勢を維持することで水平に飛び、手の小さな動作で方向転換を図る。
いつまでも真っ青な空を飛んでいたい気持ちになるのだろうが、エンジンの灯油タンクは小さく、一度の飛行で持続可能な距離はおおよそ約55km。時間にしておよそ15分の空中旅行だ。

現在、2020年に開催されるドバイ国際博覧会がスポンサーとなり彼を支援している。その関係で2015年10月、エミレーツ航空のエアバスA 380とともにドバイの空を水平飛行したロッシー。
世界最大の旅客機「エアバスA380」とともにフライイング
まるで映画のワンシーンのよう。今度は誰でも簡単に水平飛行できる翼の開発を期待したいものだ。