「ドイツ語圏」は、ドイツだけではありません。しかし、その「“ドイツ”語」は、ドイツで話されているのとは全く違うこともしばしば。特に南ドイツで聞くドイツ語と若干似ているようでいて非なるものがオーストリアで使われているドイツ語!

特にメニューの「“ドイツ“語」が案外異なるのです。訳そうとして、頭を悩ませる回数の多いこと。そして、注文してみたら全く想定外のものが出てきた!えー!ってなったことも、1度や2度ではありません。そんなわけで!今回は、知られざる(?)オーストリアの「食べ物の“ドイツ”語」です!

⭐ Grammelknödel > グラメルクネーデル (標準ドイツ語 → 不明)
出典: © Tatsutoshi Tsuchiya

ウィーンのレストランで、達筆なメニューにひっかかりました。“Grammelknödel”
クネーデル、はわかりました。お団子ですよね。でもグラメル?ドイツでは聞いたこともない単語な上に、辞書にも載っていません。

しかしオーストリア人がオススメというので注文してみたところ……やってきたのは、ジャガイモ団子、ドーン!

こ、これだけ?
ジャガイモはオーストリアドイツ語では、Erdapfel(エルドアプフェル)「大地のりんご」となり、フランス語のポムドテールと意味が同じになるのが面白いな〜なんて思いつつ、団子を割ったら、中から……。

すごいの出て来ました!
これがグラメル。ラードを取ったベーコンの残りの部分です。噛むほどに脂のねっとりとした濃厚な味に広がります。芋団子1個と思わせて、圧倒的なボリュームのお料理でした。でも、また食べたい!ちなみに、グラメルシュマルツ(カリカリベーコンが入ったラード)も黒パンにぴったりです♪

⭐ Butterschnitzel > ブッターシュニッツェル(標準ドイツ語 → Hackbraten?)
出典: © 河内秀子

そして同店でもう一つ注文したのは、ブッターシュニッツェル。上の写真のメニュー、2行目です。

Rehは(鹿)で、Butter(バター)もわかる。Schnitzel(カツレツ)もわかる。初級ドイツ語ですよね。バターで黄金色にこんがり揚げた鹿肉のシュニッツェルかな、と思うじゃないですか?!じゃコレ!と注文したら、こんなんでてきました。

出典: © raddatz.at
えっ、これがブッターシュニッツェル?とコックさんに思わず確認。このように「同じ言葉なのに、違う食べ物を指す」というのが、一番悩ましいのです。

しかも、ウィーンでシュニッツェル、といえば、Wienerschnitzel「ウィーン風のシュニッツェル」、仔牛のカツレツを指すと信じ込んでいただけに…………。

出典: © 河内秀子

写真は、紙のように薄く、大きなお皿からはみ出るようなサイズの、ウィーンの有名店Figlmüllerのシュニッツェル。さすが本場、カリッカリで美味しかったです!

⭐ Eierschwammerl > アイアーシュヴァマル(標準ドイツ語 → Pfifferlinge)
出典: © 河内秀子

初めてウィーンに仕事で来た際、カフェのメニューで見つけたこの言葉。えっとEier(卵)で、、?なんだシュヴァマルって?

「たぶん卵が入った何か」だと想像して注文したところ、きのこ入りのスクランブルエッグが出て来たので、「スクランブルエッグ」がオーストリアでは「アイヤーシュヴァマル」というのだと誤解し、別の場所で「アイヤーシュヴァマル」を注文してみたところ……シュヴァマルとうのが、標準ドイツ語でのPfifferlinge(プフィファーリンゲ)、つまりアンズ茸のことだと判明。

出典: © 河内秀子

晩夏〜秋にかけてメニューに登場する、コリコリっとした独特の歯ごたえのこのキノコ。好きな食材ではあるんですが、細かなヒダがあって汚れを取るのが大変なので、自宅で料理することはあまりありません。

なので、シュヴァマルの“正体”がわかった今では、秋にオーストリアでの仕事があるときには、ここぞとばかりにアイアーシュヴァマルを注文します。

クリームでソース煮してお団子や平麺にかけたり、さっと炒めてサラダにも。南ドイツの一部でも、アイアーシュヴァマルというところもあるようですよ。

⭐ gebacken > ゲバッケン(標準ドイツ語 → paniert)
Backhendlsalat; 出典: Wikipedia CC BY-SA 4.0

「同じ言葉なのに、違う物を指す」のが悩ましいとブッターシュニッツェルの項にも書きましたが、こちらもそのひとつ。

Gebackenはbacken(オーブン焼き)の過去形でしょ?と思っていたら大間違い。こんがりパン粉をつけて揚げたものが出てきて、えっ?ってなりました。

でも、オーストリア料理のレストランには必ずといっていいほどある、定番の鳥唐揚げのせサラダBackhendlsalat は私の大のお気に入りです♪

⭐ Paradeiser > パラダイザー(標準ドイツ語 → Tomate)
出典: © ichkoche.at

もう大丈夫!オーストリア料理の言葉は大体わかった!とたかをくくっていると、不意打ちのように突然出てくる、目にしたこともない言葉。

Paradeiser Salatという言葉をメニューで見かけた時、Paradiser Salat、つまりパラダイスみたいなサラダかと空見してしまい(汗)、華やかな盛り合わせサラダ?かと想像して注文したら、大量のトマトスライスが出てきてがっかりしたことがありました。

いまもうっかり意味を忘れてしまうオーストリア・ドイツ語単語ナンバーワンです。

⭐ Topfen > トプフェン(標準ドイツ語 → Quark)
出典: © 河内秀子

オーストリアは、メールシュパイゼと呼ばれる、粉菓子が充実していることでも知られています。カフェハウス自家製のアプフェルシュトルーデルは、サクサクと歯ごたえの残るリンゴをたっぷり巻き込んであって本当に美味しい♡

出典: © 河内秀子

ケーキは実物を見て注文できるので、注文してがっかり、ということはないんですが最初は、?と思ったケーキが、「トプフェンシュトルーデル」や「トプフェントルテ」。

標準ドイツ語ではトプフ、という言葉は深鍋なので、なんとなくお鍋を想像するからです。

出典: © 河内秀子

あと、ドイツではあまり見かけないのが、エステルハージー・トルテ(エステルハージー・シュニッテ)!表面の筋が入ったアイシングは、オーストリア=ハンガリー帝国時代のハンガリー貴族、エステルハージー家の紋章を模しているんだとか。

しかし、ガラスケースいっぱいに並ぶ重厚なケーキを見ると、ハプスブルク帝国の食文化の実力を実感します。

アプフェルシュトルーデルなどの焼き菓子系には、ぜひSchlagobers(シュラークオーバース)、つまりSahne(生クリーム)をたっぷり添えて。

オーストリアは美味しいなあ。。。
まだまだ色んな美味しいオーストリアドイツ語の食べ物がいっぱいありますが、今回はこの辺で!

みなさん、baba!バッバー!(オーストリア語で、Tschüss!)

執筆者:河内秀子
東京都出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中からライターとして活動。雑誌『Pen』や『料理通信』『ミセス』、『Young Germany』『Think the Earth』などでもベルリンやドイツの情報を発信させて頂いています。
Twitterで『#一日一独』ドイツの風景をほぼ毎日アップしています。いまの興味は『#何故ドイツではケーキにフォークを横刺しにするのか問題』。美味しくてフォークを刺してあるケーキを探し歩く毎日です。HPもご覧ください。