移住して3年半、だいぶドイツのことがわかってきた(つもりになっている)この頃……ですが、いまだに首をかしげてしまうのが、ドイツの住宅での「土足か否か問題」。

日本の友人に「ドイツ人って家のなかでも靴を履いてるの?」なんて聞かれたこともありますが、「履いてないよ、いや、でも履くこともあるかな……」とどっちつかずの返事をしてしまいました。

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私の観察範囲では、ドイツでは家の中の玄関付近で靴を脱ぎ、スリッパやルームシューズに履き替え、というスタイルが大多数。

“玄関付近”と書いたのは、ドイツの住宅には日本の玄関にあるようないわゆる三和土や土間とそこからの上がり框はなく、ドアぎりぎりまで室内と続きのフローリングやタイルが敷かれていることが多いため。

出典: flickr/Vanessa Mebus CC BY 2.0

つまり、靴を脱ぐ場所と室内の明確な隔たりはない、ということ。だから、家の中の入口付近はなんとなくほこりっぽいというか、ジャリジャリしているというか。
(マットなどを敷いてその上で靴を脱ぐようにしている家や、たまにドアの外で靴を脱ぐスタイルにしている人も見かけます。で、私もそれを真似して外に靴を揃えておいたところ、大家さんに「共有部分に私物は置かないように」ときっちり叱られました……)

清潔好き、とか潔癖、なんてイメージがあるドイツ人ですが、外から帰ってきて、なにを踏んだかもわからない靴で家の中に入っても平気な顔を見るにつけ、案外そうでもないのかも?なんて思ってしまうのです。

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まあ、日本人のように床に座る生活をしていないので、多少の汚れは気にならないといえばそうなのかもしれませんが、その床を赤ちゃんがハイハイしていたりして、やっぱり「ん?」となってしまいます。

とこのように、日本の住宅のような玄関はないにしても、家のなかでは基本的に靴は脱ぐ、というルールになっている様子。ところが、その決まりがいとも簡単にやぶられることも。

出典: flickr/bensauer CC BY-NC 2.0

土足とルームシューズの人が混在しているホームパーティー。土足のまま入ってくる設備点検のおじさん。前回のコラムで書いた引っ越しの内見のときにも、皆さん靴のままずかずか……。ドイツ人である私の夫も、「ちょっと忘れものした」なんてシーンに、靴を脱がずに寝室に入っていったりして……。

親切(?)な人だと「靴は脱いだほうがいいですか?」なんて聞いてくれることもありますが、そこで「ええ、脱いでください」と答えると、「えっ」って顔をされたり(「そのままでどうぞ」という返事を想定しているんでしょうねえ。一度「ああ、日本人ですもんね!」なんて言われたこともありました)。

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とまあ、脱ぐのか脱がないのかはっきりしない、というか、なんとなく外に家の中を浸食されているような気分になる足元の習慣。いつかドイツで夢のマイホーム(死語ですね)を持つことがあったら、日本式のお風呂と玄関はマストで!と心のメモに書きつけてあるのです。

溝口シュテルツ真帆

編集者、エッセイスト。2014年よりミュンヘン在住。自著に『ドイツ夫は牛丼屋の夢を見る』(講談社)。アンソロジー『うっとり、チョコレート』(河出書房新社)に参加。日独をつなぐ出版社、ほろば社(Mahoroba Verlag)主催。『ドイツで楽しむ日本の家ごはん』が好評発売中!twitterアカウントはこちら→@MMizoguchiStelz