近ごろ日本でも口にされることが多くなったクリスマスの焼き菓子、シュトレン。その発祥は?あの形状が表しているものは?すぐに語れる蘊蓄をご紹介しよう。
シュトレンについての記述は、すでに1329年の資料に見られる。そのころのシュトレンは、小麦粉を水で練って、酵母で膨らませただけの非常に味気ないものだった。
カトリック教徒にはイースターの40日前から、動物性食品や油脂、嗜好品を控える断食の習慣があるが、ザクセン地域では、このシュトレンが断食期の栄養源とされていた。
なんの面白みも味わいもないシュトレンを40日間ひたすら食べ続ける信徒を見かねたザクセンの領主は、ある日、ローマ教皇に文をしたため、断食の緩和を懇願。
そして1491年、教皇から“バター食用許可書” (Butterbrief) が公布され、シュトレンにバターを加えることが許された。次第に、砂糖やミルク、ドライフルーツも加えられるようになり、ザクセン地域のシュトレンは滋味豊かなものへと進化していった。
ザクセンには、1560年から巨大なシュトレンを焼く伝統がある。そのころの領主アウグストが大変なシュトレン愛好家で、日頃の労をねぎらって兵士たちのために巨大シュトレンを焼かせたのがはじまりだという。
1730年の記録では、100人の職人たちが、牛乳缶326本分のミルク、1000kgの小麦粉、3600個の卵を使って1.8tのシュトレンを8日間かけて焼き上げた。
巨大シュトレンの伝統は今日まで引き継がれており、ドレスデンでは毎年、クリスマス2週間前の土曜日にシュトレン祭 (Stollenfest) が開かれている。
シュトレン祭では、巨大シュトレンが荷車に載せられて街を練り歩き、最後には切り分けられて市民たちにふるまわれる。
ドレスデン市民は、シュトレンのことを「シュトリーツェル(Striezel)」という。ドイツ最古とされるクリスマスマーケットも、「ドレスドナー・シュトリーツェルマルクト(der Dresdner Striezelmarkt)」と呼ばれている。
シュトリーツェルマルクトでは、すでに1500年からシュトレンが「クリストブロート(Christbrot)」の名で売られていた。もちろん今でもそれはクリスマスマーケットの目玉商品だ。
日本ではあまり知られていないが、ドイツではシュトレンは年間を通じて口にされている。そのため、クリスマス時期のシュトレンをわざわざ「クリストシュトレン(Christstollen)」と呼ぶのだ。
現在では、クリストシュトレンはクリスマスの4週間前から少しずつ食べるものとされているが、以前はクリスマスイブにカットされ、そこから一週間食べられていた。
カットする前のシュトレンは、粉砂糖をまぶされた白くぽってりとした形状だが、これは、おくるみにくるまれた幼子キリストを表しているとされる。
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