サンドラの日独比較 Vol. 10
ドイツでは贈り物はプレッシャーになる?

ドイツ人と日本人のプレゼントに対する感覚には大きな違いがあることをご存知でしょうか。一般的に、値段のはるものはプレゼントしないというのがドイツ流。必ずしもケチとは限りません(とはいってもドイツは総じて日本よりケチな人が多い印象ではありますが。笑)。むしろ「高価なものを相手に贈ると、相手にプレッシャーを与えてしまうかもしれない。」と気を遣う人がドイツには多いようです。

出典: flickr/Patrizia Krämer CC BY-NC-ND 2.0

そのため大の大人が、恋人である女性に対して、手作りの品とか、出張先で拾った綺麗な落ち葉やドングリなんかをプレゼントしちゃったりします。そうそう、以前金融で働いていたドイツ人男性で、休暇先の綺麗なビーチの砂を瓶に詰めて、帰国後に恋人の女性にプレゼントした人もいました(笑)まあロマンチックですけど、日本の感覚だと「お前は小学生か!」とツッコミを入れたくなるかもしれません (笑)

出典: flickr/Lukas Portner CC BY-ND 2.0

しかしこれが意外にもドイツ人同士のカップルだと、これらのプレゼントは「アリ」なのですね。女性もこの手のプレゼントに満足していたりします。というのも、ドイツの感覚だと、男性からの高価な贈り物は「金品で操られているみたい」「お金で買われている女みたい」と映ることもあり、ある種のマイナスイメージがあるのです。

出典: flickr/René Gademann CC BY-NC-ND 2.0

そして、ディナーを奢られてしまうと、「その後、ベッドインOKと見なされた安い女」とも捉えられがち。少なくとも、ディナー招待=ベッドインという“プレッシャー”を感じる女性はドイツにおいては少なくないようで、その場の食事やお酒を楽しめなくなってしまう女性もいたりします。これはもしかしたら男性側にも原因があるのかもしれませんね。

出典: flickr/Shever CC BY 2.0

ちなみに日本に住んで20年、日本の感覚に慣れてしまった私サンドラは、あまり深く考えることなくお食事をご馳走になっちゃったりもしますが、そこでベッドインのプレッシャーを感じたことはありません(笑)

男女の仲になっても、飲食店では別会計を貫き通すことが多いドイツ人カップル。ちなみにカップルに限らず、親子や兄弟など「近い」関係の場合、クリスマスプレゼントを渡す時に購入時のレシートを一緒に添えることもあります。

出典: flickr/r-hol CC BY-NC 2.0

プレゼントの値段がバレますから、日本人には理解できない感覚かもしれませんね。でも合理的な人が多いドイツでは、最近これが普通となりつつあります。実はこれは「プレゼントの服の色やサイズが合わなかったら、商品を交換してくれてもオッケーよ」という一種の“気遣い”でもあるのです。ドイツのデパートが、クリスマス後に、ごった返しているのはこの商品交換のためなのでした。

出典: flickr/Ed S. Johovac CC BY 2.0

話を戻すと。もしもこれを読んでいる日本人女性で「ドイツ人の彼氏がレストランで奢ってくれない。まともな贈り物をくれない。」と悩んでいる人がいたら、「私、愛されていないのでは?」と疑う必要はありません。これ、単なる「文化の違い」なのでした!

サンドラ・ヘフェリン

コラムニスト。ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフはナニジン?」、「ハーフといじめ問題」、「バイリンガル教育について」など、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作:サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作:サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ) など計11冊。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。