テキスト通りのドイツ語を覚えておけば大丈夫!と思っていましたが…

オーストリアに移住して数年が経つ筆者ですが、未だに苦戦しているのがチロル(オーストリア)ドイツ語。ドイツ語は移住前に独学で少し勉強はしていましたが、実際にこちらに来てみると、実際に使われているのは独特な言い回しや聞いたこともない単語ばかり。

挨拶の言葉から基本的な普通名詞まで違ってたりするので当初はとても戸惑いました。そこで今回は筆者が普段の生活で頻繁に聞くチロル方言をいくつかご紹介したいと思います。

<挨拶>

・ こんにちは
− Grias di(グリーアス ディ)= Grüße dich
− Griaß enk(グリーアス エンク), Griaß eich(グリーアス アイヒ)= Grüße euch
− Grüß Gott(グリュース ゴット)
− Servus(ゼアブス)

出典: flickr/Ethan Prater CC BY 2.0

挨拶の基本、「こんにちは」からすでにこんなにたくさんの言い方があるんです。一般的に使われているのが、南ドイツ同様、グリュースゴット。相手が友人など親しい場合はServus、Grias diの方がよく使われます。

ちなみに、Servus(ゼアブス)は南ドイツ、オーストリア全域、ハンガリーやクロアチアなど、その他の欧州でも挨拶用に使われている言葉で、語源はなんと「奴隷」を意味するラテン語。”Ich bin Dein Diener”(私はあなたの召使いです)という意味を表すために「奴隷」のServusが使われるようになり、 やがてそれが挨拶の言葉になったそうです。起源を辿れば封建的な背景がある言葉ですが、今ではフレンドリーなシーンで使われている挨拶言葉です。

・ さよなら
− Pfiat di(フィアト ディ)
− Pfiat enk(フィアト エンク)、Pfiat eich(フィアト アイヒ)
− Wiederschaugn(ヴィダシャウン)

出典: flickr/Cha già Rosé CC BY-SA 2.0

Pfiat di(フィアト ディ)はPrüat di Gottが略されたもの。これは”Behüt Dich Gott”(神に守られますように)から”B’hüt di Gott “に省略され、訛りが加わってPrüat di Gottとなり、Gott を省いてこの形になったものです。WiederschaugnはAuf WiederschauenのAufがなくなり、「e」が「g」に訛ったもの。

「こんにちは」も「さよなら」も何種類もあってどれを使おうか迷ってしまいますが、この中で最もよく聞くのは「こんにちは」は「Grias di」、「さよなら」は「Pfiat di」です。

ただ、その他のドイツ語圏と同じようにHallo(ハロー)、Ciao(チャオ)、Tschüss(チュース)もよく使われています。筆者は言いやすいハローとチャオを使うことが多いです。

<食べ物 / お店>

・ チーズ

出典: Obi

Kaas(カース)= Käse
ケーゼが訛ってカースという言葉に。チーズではないけれど、ミートローフのLeberkäse(レバーケーゼ)も、チロルではFreischkaas(フライシュカース)に。でも、ご心配なく!お店ではレバーケーゼでも通じます!

・ たまご

出典: flickr/Andreas Levers CC BY-NC 2.0

Goggele/Goggelen(ゴッグレ / ゴッゲレン)= Ei/Eier
卵もチロル訛りになるとゴッグレ・ゴッゲレンと、何だかいかつい響きに…。なお何故こう言うのかは筆者の夫、義両親に聞いても不明…。

・ アプリコット

出典: flickr/Jutta M. Jenning CC BY-NC-ND 2.0

Marille/Marilln(マリレ / マリルン)= Aprikose/Aprikosen
オーストリアではアプリコットはMarille(マリレ)。イタリア語のArmellinoから派生したと言われています。MarillnはMarilleの複数形Marillenの「e」が欠落したもの。

・ ナス

出典: flickr/Kate Bunker CC BY-NC 2.0

Melanzani(単数、複数共通)= Aubergine/n
ナスはメランザーニ。これもMarille同様、イタリア語のナスMelanzaneから生じたもの。初めて聞いた時はナスとは思わずメロン!?と聞き返しました・笑

・ お会計お願いします

出典: flickr/x1klima CC BY-ND 2.0

Zol’n bitte!(ツォルン ビッテ)= Zahlen bitte!
Zahlen(ツァーレン)が訛ってZol’n(ツォルン)に。楽器名でも山の名前でもないので気をつけてください・汗


<人 / 感情>

・ 男性・女性

出典: Obi
出典: Obi

Bua(ブア)= Mann
Dirndl (ディアンドル)= Frau

チロルでは男性はブア、女性はディアンドル。地元レストランのトイレにはこんな表示プレートがかかっています。Buaは男の子を指すBubが訛ったもので、Dirndlは女性の民族衣装ディアンドルからきているそうです。

・ 好きだよ

出典: flickr/Yannig van der Wouwer CC BY-NC-ND 2.0

− I mog di.(イ モーグ ディ)= Ich mag dich.
− I liab di. (イ リアブ ディ)= Ich liebe dich.

標準ドイツ語からはかなりかけ離れた響きのI liab di. (イ リアブ ディ)。チロルドイツ語ではドイツ語の響きに重要な「ch」が欠落してしまうんです。ちなみに、”Ich dich auch.”と返答したい場合、 ”I di a”(イ ディ ア)となります。これまたドイツ語からかけ離れた響きですよね。

・ ge!
ありえない!とか最悪!など嫌な事、不快な事を聞いたりした時にゲ!と言います。日本語の「ゲッ!」、「ゲー!」と同じ感じですね。

・ha?
これも日本語の「は?」と同じ意味で相手の言葉が聞き取れなかった時に言います。「ハ?」と言われると相手が怒っているかのようにも聞こえますがただ聞き返しているだけなのでご心配なく!

・Mei schian!
「素敵!」とか「可愛い!」といった時にこちらでは「マイ シァーン!」と言います。義母は嫌なことがあったらマイ!(怒)、赤ちゃんや動物を見た時は可愛い!という意味でマーイ!(嬉)といったようにマイ!だけをよく使っています。MeiはMein(ではないかと義母は話していました・笑)、schianは素敵といった意味のschönが変化したもの。

出典: flickr/Michaela Simoncini CC BY 2.0

いかがでしたか?ご紹介したのはほんの一部でまだまだ筆者も知らないチロル方言がたくさんあります。こちらに来る機会がありましたら挨拶は是非ともチロル流で交わしてみてくださいね!

※今回ご紹介したいくつかはチロル内だけでなく他の地域でも使われている場合もあります。

執筆者:Obi
オーストリア西部のチロル地方在住。「地球の歩き方」オーストリア&チロル特派員を担当。2014年から住んでいるものの、まだまだこの国には知らないことだらけ。そんなオーストリアやチロルの魅力を発信していきます。

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