ドイツの庭先でよく見かける置物「庭の小人」。なんと「小人人口」は2500万人にも上るというからその人気ぶりはすさまじい
1. そもそも「庭の小人(Gartenzwerg)」って何?

グリム童話の「白雪姫」に登場する小人なのでは!?と勘違いしてはいけない。「庭の小人」は白雪姫とは全く無関係な庭園装飾用フィギュアである。木や陶器、最近ではプラスチック製のものも多い。大きいもので身長は69センチほど。

出典: Wikipedia CC BY-SA 3.0

ファンは、可愛らしくてほのぼのした姿に癒される

出典: © Europa-Park Rust
2.「庭の小人(Gartenzwerg)」の誕生はいつ?

音楽家バッハの出生地としても知られるテューリンゲン州(Thüringen)のアイゼナハ(Eisenach) から約60km離れたとある小さな村に庭園装飾品工房フィリップ・グリーベル(Phillip Griebel)がある。

19世紀の終わり、そこの見習い工が、たまたま粘土で小人を作ることを思いつき、1884年にライプツィヒで開かれた見本市に出展したところ大好評を博し、製造が始まった。

出典: Wikipedia Public Domain
3.「庭の小人(Gartenzwerg)」がどれもこれも似た格好をしているワケは?

工房フィリップ・グリーベルがあるテューリンゲン州には古くから岩塩、石炭、重晶石、石油などの採掘場が数多くあり、鉱山業が盛んだった。狭い坑道で働いていた鉱夫たちの多くは小柄な男たちだった。「庭の小人」はまさに19世紀後半のテューリンゲンで働く鉱夫の姿をモデルにして作られたのだ。

三角帽を頭にかぶっているのも、ごっつい靴を履いているのも、ランプやツルハシ、スコップや手押し車を持っているのもそのためだ。

出典: © libellius.de
4.「庭の小人(Gartenzwerg)」がドイツ全土に広まったワケは?

19世紀に入ると、都市の集合住宅に住んでいる人たちも庭を持ちたがるようになり、郊外にたくさんのクラインガーデンが設けられるようになった。

クラインガーデンには大きな装飾品などを置くスペースはなく、小さな「庭の小人」は小さな庭にもってこいのサイズだった。そのため、クラインガーデン所有者を中心にすぐさまドイツ全土に広まった。

出典: © pfaffstaett.ooe.gv.at
5.「庭の小人(Gartenzwerg)」の人気が不動なワケは?

ゲルマン神話やグリム童話にも度々登場する小人たち。ドイツでは「小人」は古くから馴染みのある存在だが、その多くは不気味で意地悪なものばかり。

それに比べて「庭の小人」は、どれもこれも笑顔を浮かべ、優しそうで可愛らしい。愛好家の心を癒してくれる存在 – それが「庭の小人」なのだ。

出典: © pfaffstaett.ooe.gv.at
6.「庭の小人」がパロディ化されるワケ?

「庭の小人」の熱狂的ファンが多くいる中、同じぐらい多くいるのがAnti-Gartenzwerg市民。反対派たちの意見は、「庭の小人」はドイツの景観を損なう悪趣味極まりないもので、その愛好家らは単なる「貧乏市民」そのものだと酷評する。時折、街で見かけるパロディ化された「庭の小人」たちは、反対派たちの対抗意識の表れだ。

あえて小人っぽくない姿をした「小人」たち

出典: © zwergen-power.de

小人なのにランプではなく最新のソーラーランプ、ビール瓶や銃を持った小人たち

出典: © garten-treffpunkt.de/Oliver Fries

刺された小人はパロディの代表格だ

出典: Wikipedia CC BY-SA 3.0

ドイツでは愛好派と反対派で意見を真っ二つに分断させる「庭の小人」の存在。あなたは何派だろうか?