なぜ、それが悪口に?!知られざる豊かなドイツ語悪口文化
ベルリンのライター、河内秀子です。ベルリン生活も今年で17年目、ドイツ語とのつきあいも17年。上達はなかなかしませんが、ムダな知識ばかりが増えていく……。
自分メモも兼ね、知ってたらちょっとドイツが楽しくなるかもしれない「ドイツ語トリヴィア」をお届け出来ばと思います。どうぞよろしくお付き合いください。
外国語の中でも難易度が高いと言われることが多いドイツ語。濁点が多いからか、文法がしっかりしているからか、真面目で堅いイメージですが、実は卑罵語、つまり悪口が豊富な言語でもあります。

この写真に写っているものには、一つの共通項があります。それは全て悪口、バカにするような言葉になるということ。バナナ?ボトル?身近なアレも、言い方次第です!
Du Schwein! この豚野郎!

「豚野郎」という言葉は、日本だと字幕や翻訳小説とかで目にすることはあっても、実際口に出すことは少ないのでは。これが悪口なのはすぐわかりますが、不思議なのは、悪口でもある反面、ドイツでは豚は幸運のシンボルでもあり「Schwein gehabt!(豚を持った)」で、ラッキーという意味になるということ。豚は大切な家畜ではあるのでしょうが……。
Du bist völlig Banane! 君、頭どうかしてるよ!

「Jemand ist völlig Banane! (〜はすっかりバナナだ!)」とは、「〜は頭がどうかしている、おかしい」と他人をバカにするときに使う言い回しです。バナナが貴重な時代にも言われていたのでしょうか?気になります。
So ein Käse! 馬鹿馬鹿しい!

「Red keinen Käse! (チーズについて話すなよ)」という表現もあります。意味は「Rede keinen Unsinn」とか「Rede kein dummes Zeug」と同じ。つまり、「くだらないことを言うな!」という意味です。
最初に聞いたときは、はぁ?となった謎の言い回し。チーズのどこがいけないんですか、と聞きたくなりますが、もともとは安価で簡単に作れるクヴァルク(フレッシュチーズ)を指し、軽蔑の意味を込めて言われ始めたとのこと。
Das ist mir Wurst! どーでもいいさ

ベルリンでよく耳にするこの表現。ベルリン訛りだと「Dit is mir Wurscht!」。意味は、Scheißegalとほぼ同じです。「それは私にとってソーセージだ」。食生活におけるソーセージの重要性が非常に高い国なのに、何故このようなソーセージを見下す言い回しが存在するのか?その由来には諸説あるようですが「ソーセージはどこから食べてもソーセージ」というところから来ているという説が有力です。
Du bist eine Flasche! お前、本当に使えねえ奴だ!

「お前は瓶だな!」って、瓶?何がどう悪口なのか理解に苦しむ言い回し。悪口なら、この瓶は絶対空だろうと思っていたら、超有名な「空瓶」発言がありました。
1998年、当時、バイエルンミュンヘンの監督だったイタリア人のトラッパトーニが、敗退にキレ、めちゃくちゃなドイツ語で怒りまくる。そして、締めの言葉「Ich habe fertig!」も有名になりました。
Marmeladinger マーマレード人 (ドイツ人を侮辱していう言葉)

バナナ、ソーセージ、チーズと食品が卑罵語として並びましたが、パンも例外ではなく「Dumm wie Brot! (パンのようにアホ)」という言い回しがあります。
ではジャムは?東部オーストリアではドイツ人を侮蔑して「Marmeladinger」と言うそうです。第一次大戦時、ドイツ兵が安いマーマレードばかりパンに塗って食べていたことに、端を発しているそう。「キャベツ」もドイツ人をバカにする言葉として有名ですね。
Vollpfosten 大馬鹿者

「Vollpfosten」は、最近出て来た侮蔑語です。柱やサッカーのゴールポストを指すPfosten。何もできず突っ立っている“でくの坊”のイメージ?サッカーでボールがポストに当たってしまって点に繋がらなかった、ということから生まれた表現だとういう説も。「Vollpfosten-Antenne(自撮り棒)」は2016年の若者言葉に選ばれました。
Kümmeltürke キャラウェイトルコ人 (トルコ人を侮辱していう言葉)

現在はトルコ移民を侮蔑するこの言葉、元々はKümmel(キャラウェイシード)を多く栽培していた東部ザクセン・アンハルト州の街、ハレ(Halle)やハレ出身の学生を指す言葉だったそうです。しかし、戦後トルコ移民がドイツにやってくると、この言葉はトルコ人に対する悪口として使われるようになりました。
が……実はトルコではこのキャラウェイシード、使われていないんです。なのでトルコ人は、?と首を傾げたようです。トルコ料理によく使われるのはクミン – つまりKreuzkümmelの方。しかし、勘違いされたままこの侮蔑語が定着。でも本来はドイツ人がこのキャラウェイトルコ人だったということなのです。
人を呪わば穴二つ、ではないですが、他人の悪口はほどほどに。いつか自分の身に返ってくる、と思ったお話でした。
ドイツ人は多分不思議に思わない、でも外国人からすると「へ?」と頭を傾げてしまうようなドイツ語。使ってみたら、ちょっとドイツ人になった気がする・・・かもしれませんよ。
執筆者:河内秀子
東京都出身。2000年からベルリン在住。ベルリン美術大学在学中からライターとして活動。雑誌『Pen』や『料理通信』『ミセス』、『Young Germany』『Think the Earth』などでもベルリンやドイツの情報を発信させて頂いています。
Twitterで『#一日一独』ドイツの風景をほぼ毎日アップしています。いまの興味は『#何故ドイツではケーキにフォークを横刺しにするのか問題』。美味しくてフォークを刺してあるケーキを探し歩く毎日です。HPもご覧ください。