サンドラの日独比較 Vol. 3
日本の有休の少なさは、欧州ではデモ!
日本人と外国人が一緒に働く職場では、ときに「有給休暇」というものに関するお互いの「感覚の違い」があらわになったりします。特に上司が日本人で、部下が外国人の場合はシビアな状況になることも。それぐらい、日本人と欧州人では「ワークライフバランス」に対する考え方が違います。
日本では「ただ単に遊んで休みたいから」という理由で有給休暇を申請することが雰囲気的に認められていない職場もあります。風邪をひいたり病気になったからと有休を使うことは認められても、「ただ単に遊びたいから」、「ただ単に休みたいから」という理由で有休を申請することにかなりの遠慮がある国、それが日本です。
ちなみに日本で働く外国人の場合、母国に住んでいる両親が病気になると、会社はそのことに同情はするものの、”いざ”母国に一時帰国することについては、いい顔をしない会社が残念ながら少なくありません。
どうりで日本の有休消化率が7年連続世界ワースト1位だったわけです。2014年にそれまで2位についていた韓国にワースト1位の座を僅差で譲ることになった日本ですが、まだまだ状況は変わっていないと思います。
ヨーロッパでは、年間平均30日の有休を取得します。もし休暇中にケガや病気をしたら、その日数は有休から引かれません。
例えば、スキーを楽しむために2週間有休を取ったとします。最終日に骨折して医師から全治3週間との診断が出れば、そのまま今度は病欠として3週間休むことができます。
メルケル首相も休暇中にクロスカントリーでケガをして、3週間公務をキャンセルしましたが、ドイツでは当たり前のこととして捉えられました。
日本人は”あまり休みを欲していない”とか”休みに無頓着だ”、などと言う人もいますが、私が思うに、「まわりの目があって、なかなか有休がとりにくい。だから有休をとっていない」というのが現状のような気がします。
日本人のそのような後ろめたさを欧州人は理解することができません。なぜなら欧州人は、何週間か「ヤッホー」と遊び、長い時間をかけてリフレッシュするからこそ、また心身ともに健康な状態で仕事に取り組める、と考えているからです。
日本には休暇を取らずに働き続けた結果、鬱になったり、思いつめてしまう人もいます。日本人は無意識のうちに仕事に命をかけています。
でも欧州人にとって大切なのは恋人や家族です。仕事に命をかける欧州人にはサンドラはまだ会ったことがありません(笑)。
ちなみに「休暇が命」のドイツ人の場合、日本なみの条件で働かされたら、きっと「もっと休暇をよこせ」とデモが起きるに違いありません(笑)。
有休を取るのに罪悪感を感じてしまう日本人。おちおちケガや病気もできず、プライベートで恋人や結婚相手と長期旅行に行くこともできず、子供を持てば子供のケガや病気の影響を受けることになると考えると、子作りにも慎重にならざるを得ない環境。
決して健康的とは言えませんよね。人間らしく生きていけるワークライフバランスを考えたいものです。
続きは、著書『ドイツ育ちの“ハーフ”は知っている! 日本人、ここがステキで、ここがちょっとヘン。』をご覧くださいませ。
この記事が今年最後の「サンドラの日独比較」になりますが、みなさん、素敵なクリスマスとお正月をお迎えください! そして、この記事をきっかけにほんの少しライフワークバランスについて考えてみていただければ幸いです。
Ich wünsche Ihnen Frohe Weihnachten und Einen Guten Rutsch ins Jahr 2017!
サンドラ・ヘフェリン 2016.12.16
サンドラ・ヘフェリン
コラムニスト。ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフはナニジン?」、「ハーフといじめ問題」、「バイリンガル教育について」など、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に「ハーフが美人なんて妄想ですから!!」(中公新書ラクレ)、「ニッポン在住ハーフな私の切実で笑える100のモンダイ』(原作:サンドラ・ヘフェリン、漫画: ヒラマツオ/KADOKAWA)、「『小顔』ってニホンではホメ言葉なんだ!?~ドイツ人が驚く日本の「日常」~」(原作:サンドラ・ヘフェリン、漫画: 流水りんこ/KKベストセラーズ) など計11冊。ホームページ 「ハーフを考えよう!」 を運営。趣味は時事トピックについてディベートすること、カラオケ、散歩。