ファッション界に名を轟かせるドイツ人フォトグラファーのピーター・リンドバーグ。彼に撮られることを望むスーパーモデルやスターたちの名を挙げればきりがない。
スーパーモデルたちに囲まれて中央で笑みを浮かべているのがピーター・リンドバーグ(Peter Lindbergh)。1990年のニューヨーク、イギリス版『VOGUE』のために行われた撮影でのワンシーンだ。
リンドバーグは1944年、ドイツ・リッサ(現ポーランド)に生まれた。難民として故郷を追われた後、ルール地方のデュースブルクで成長。ゴッホのように描きたい、との夢を胸に、1969年からドイツ西部のクレーフェルトで絵画を学んだ。
しかし、デュッセルドルフで買った中古のミノルタが、リンドバーグの人生を大きく変えることになった。何気なく兄の子どもたちの写真を撮っていて、ポートレートに魅了されている自身に気が付いたのだ。
1971年から写真の世界で仕事をはじめたリンドバーグ。下積みを経て、1988年からは『VOGUE』で、1992年からは『Harper’s BAZAAR』で活躍。ジョルジオ・アルマーニ、ジル・サンダー、プラダ……彼が撮影を手がけた一流メゾンは数知れない。
彼が撮った1988年の海岸でのモデルたちのカットは、『VOGUE』史上でもっとも有名で重要な1枚に数えられている。
リンドバーグの写真は、1920年代から30年代にかけての映画に強い影響を受けていると言われる。例えばこの1988年のコム・デ・ギャルソンの広告は、チャップリンの『モダン・タイムス』を思わせる。
彼は、何年後も鮮やかに思い出せる映画のワンシーンのような写真を作り上げる。こちらは、1991年、ジャン=ポール・ゴルチエに身を包んだヘレナ・クリステンセンとマリー=ソフィ・ウィルソンをフランス版『VOGUE』のために撮影したものだ。
ポートレートの分野では、ミック・ジャガー、ジョン・トラボルタ、マドンナなどのスターが、こぞって彼に撮られることを望んだ。1989年のパリでは、ドイツの雑誌『Stern』の撮影のため、ティナ・ターナーがこの命懸けの現場に挑んだ。
現在70歳を超えたリンドバーグだが、今なお精力的に撮影を続けている。この映像は、Diorのために、映画『トワイライト』でブレイクしたロバート・パティンソンを撮影した際のもの。
9月10日からは、オランダ・ロッテルダムのクンストハレで、大規模な展覧会『Peter Lindbergh. A Different History Of Fashion』が開かれる。
ドイツの出版社Taschenからは、500ページにわたる写真集『Peter Lindbergh. A Different Vision on Fashion Photography』も出版予定だ。