輝くシャンデリアに重厚な家具、美しい天井画……。まるで貴族の部屋か一流ホテルのようだが、実は、ここはとある病院の一室なのだ。

その病院とは、東京・吉祥寺にある水口病院。最先端の女性医療サービスを提供する、産婦人科医院だ。

水口病院では、「マドレーヌサービス」というセレブな出産プランが用意されている。産前・産後のアロマトリートメントにはじまり、入院中のアフタヌーンティー、退院前の記念ディナーと、出産を特別なものにしたい女性ゴコロをくすぐるサービスが盛りだくさんだ。

なかでも特筆すべきは、「エリザベートルーム」という名の特別室。エリザベートルームでは、豪奢なドレスを着て、女性なら誰もが一度は夢見たようなベッドで眠るなど、出産前後の特別な時間を過ごすことができる。

マタニティードレス
エリザベートルーム限定のマタニティードレス; 出典: mizuguchi-hospital.jp

「エリザベートって?」という方のために紹介すると、エリザベート(エリーザベトとも)とは、17世紀を生きた、「シシィ(Sissi)」の愛称で知られるオーストリア皇后のこと。バイエルン王家・ヴィッテルスバッハ家の一族出身で、たぐいまれな美しさと型破りなふるまい、旅の途中に無政府主義者によって殺害されるという悲劇の死を遂げた女王として、オーストリアやドイツを中心に語りつがれている。

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ちなみにこちらは、1870年から彼女が使っていたウィーンのホーフブルク宮殿の一室。水口病院が「エリザベートルーム」と名付けたわけがよくわかるはずだ。

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彼女は乗馬、詩作を好み、ギリシャ語を操るなど、多彩な女性であったことも知られている。

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しかし、シシィの人生は決して豊かなばかりではなかった。彼女はわずか16歳でオーストリア王フランツ・ヨーゼフ1 世に嫁ぎ、17歳で出産。窮屈なしきたりのなかで、孤独感を深めていった。

娘が2歳で病死し、皇太子である長男のルドルフは31歳で自らの命を絶つという悲劇にも見舞われている。そのファッショナブルさでも知られた彼女が、息子の自殺以降は、黒のドレスしか身に着けなかったというから、その悲しみはさぞ深かったのだろう。

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そしてこちらは、シシィが夏の間暮らしていたウィーンの有名な観光地のひとつ、シェーンブルン宮殿。「鏡の間」は彼女が使っていた1860年当時のまま保存されている。

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出産を予定している方でもない限り冒頭の水口病院の病室を利用するのはなかなか難しいが、このシェーンブルン宮殿の一部ならなんとホテルとして宿泊が可能! 広さは167㎡、ふた部屋の寝室にふたつのバスルーム、サロン、居間、小さなキッチンも備え付けられている。

出典: austria-trend.at

宿泊客は、素晴らしい庭の眺めとともに、王族気分を味わうことができる。お値段は“お手頃”なレジデンス・パッケージで1泊699ユーロ。そのほかのプランになると1泊2700から4900ユーロと超セレブ価格だが……。我こそはというシシィファンはぜひ?