ビールは大麦、ホップ、水のみから作られるべし――。それを守るか、破るか。ビール王国ドイツのトレンドはいま?
いまから500年前の1516年4月23日、バイエルン公国でビールの品質を守るための法令が制定された。「ビールは大麦、ホップ、水のみから作られるべし」として有名な「ビール純粋令(Reinheitsgebot)」だ(注:「ビール純粋令」という言葉が姿を現したのは1918年になってから。ドイツビールのマーケティングのために生み出された言葉だと推測される)。
その後ある程度緩和されたが、ビール純粋令はいまなおドイツ国内の多くの醸造所で受け継がれている。そのおかげで品質や味、ブランドイメージが保たれ、現在のドイツビール人気があるといっても過言ではない。
しかし、最近は新たなムーブメントが起こっている。アメリカからやってきたクラフトビール人気に刺激されて、ドイツでも1300カ所の醸造所でクラフトビールが作られている。
クラフトビールとは、日本では地ビールとも呼ばれる、マイクロ・ブリュワリー(小規模醸造所)によって作られるビールのこと。
クラフトビールは、味の多彩さが特徴。個性的な味わいを出すために、例えば有機栽培農家で作られたハーブなどの原料がビールに加えられることもある。330mlの小さな瓶、個性的なラベル、1本2~3€と割高なこともクラフトビールの特徴だ。
中でも成功をおさめている醸造所は、ミュンヘンのクルー・リパブリック(Crew Republic)。
「ドランケン・セイラー(Drunken Sailor)」、「ファウンデーション11(Foundation 11)」といった商品が大人気だ。
「アレ・マニア(Ale-Mania)」を生み出したフリッツ・ヴュルフィング(Fritz Wülfing)はドイツにおけるクラフトビールの先駆者。10年前、ラインラント地方ボンの自宅でささやかなビール醸造を行っていたが、その趣味が高じ、クラフトビール界の中心的存在に。
この流れを受け、大規模醸造所もクラフトビール開発に乗り出している。ラーデベルガー(Radeberger)の「ブラウファクトゥム(Braufactum)」、ビットブルガー(Bitburger)の「クラフトヴェルク(Craftwerk)」などがその代表格。
昔ながらのビールを楽しむもよし、マイクロ・ブリュワリーのそれぞれに個性的なクラフトビールを楽しむもよし。ビール王国ドイツはますます元気だ。