夏の間だけその幻想的な姿を現すオーストリアのグリーンレイク。世界中のダイバーを魅了するその湖をたっぷりとご紹介しよう。
通称「グリーンレイク」として知られるグリューナー湖（Grüner See）は、オーストリア南東部のシュタイアーマルク州（Steiermark）に位置。山々に囲まれ、豊かな雪解け水が流れる谷にある普通の“公園”だ。しかしその公園が、初夏になると最深10mに達する美しい湖に変貌する。
夏の間は、ベンチや遊歩道などのいくつかのポイントは雪解け水にすっかり水没してしまう。秋になると水はゆっくりと引いていき、冬には湖はほとんど姿を消す。なんとも幻想的だ。
特筆すべきなのは、その名の通りの透き通ったグリーンの湖水。美しい色が生まれるわけは、第1にはほとんど風が吹かず、湖の表面が鏡のように静かなため。第2は非常に透明度の高い雪解け水で構成されているため。第3は湖が消失する期間があることで、プランクトンや藻がほぼ生息できないためである。
もちろん、ここはダイバーたちにとっても大変な人気スポット。
海でのダイビングと違い、陸上にあるはずの風景が水中に沈んでいるのである。では、ダイバーたちを魅了する水中の様子をご覧いただこう。
湖底なのか地上なのかわからなくなるような不思議な感覚にとらわれてしまう。
世界的な評判を集めるようになったのは、『ナショナルジオグラフィック』の2014年フォトコンテストでこの湖の水中写真が3位に入賞したため。そのうちの別カットがこちら。
その後、ハリウッド俳優のアシュトン・カッチャーが、「リアル・アトランティス」、神の裁きにより大西洋に沈んだとされる伝説の楽園だと自身のフェイスブックで絶賛。さらにはオーストリアのラジオ局によって「オーストリアで最も美しい秘密の場所」に選ばれ、周知の場所となった。
2014年には実に10万人以上の人がここを訪れ、結果、残念ながらダイビングは禁止されてしまった。ちなみにこの湖を抱く村トラゲス（Tragöß、シュタイアーマルク州都・グラーツGrazから車で1時間の距離）の住人はわずか2000人。静かに澄んだ湖を守るための、当然の措置と言えるかもしれない。
