日本でも人気の画家クリムト。生きる喜びを分かち合うエイズ撲滅イベントが、彼の黄金の芸術に命を吹き込んだ
「ライフ・ボール(Life Ball)」は、「エイズと闘い人生を謳歌する」をモットーに、ウィーンで毎年開かれているチャリティーイベント。エイズ撲滅と患者への真の連帯を目指し、1993年から開催されており、毎年何百万ユーロもの募金が集まる。
市庁舎前広場で開かれるオープニング・セレモニーには、数万人のウィーン市民と500人のジャーナリストが、レッドカーペットを奇抜な衣装で歩くゲストたちを一目見ようと駆けつける。
こちらが注目のレッドカーペット
このイベントには、毎年ファッションテーマがあり、どんな装いで登場すれば良いかのヒントとなる「スタイル・バイブル(Stil-Bibel)」が、イベントの数ヶ月前に発表される。この年のテーマは「ヴェル・サクルム (Ver Sacrum)」。 「聖なる春」を意味するラテン語で、グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)を中心に結成された芸術家グループ「ウィーン分離派」の機関誌名でもあった。つまり、平たく言うと、「クリムト絵画風な金ピカ衣装で来てね!」といったところ。
そんな訳で、今年のスタイル・バイブルは、クリムトの有名な絵画や壁画を83人ものモデルを使って再現したものとなった。
クリムト「死と生(Tod und Leben)」の再現

クリムト「ベートーヴェン・フリーズ(Beethoven-Fries)」の再現

クリムト「König Midas」の再現

クリムト「医学(Medizin)」の再現

クリムト 「ダナエ(Danae)」 の再現

クリムト 「Goldenes Flies」 の再現

そして、今年のライフ・ボールの「顔」はコンチータ・ヴルスト(Conchita Wurst)だ。
オーストリアの歌手で、女装家なのだが、顔いっぱいにヒゲをはやしている。「ユーロビジョン・ソング・コンテスト(Eurovision Song Contest )2014」で圧巻のパフォーマンスを見せ優勝したことで、オーストリアとヨーロッパでは大変な有名人なのだ。
コンチータはクリムトの代表作「黄金のアデーレ」を再現した。

13,000個のスワロフスキーのクリスタルを使い、1,250時間もの時間をかけて手作業で装飾された黄金の衣装をまとった。
フォトグラファーとコンチータ

チャリティーイベントであっても思いきり華やかに。人生を豊かにするエンターテインメントに妥協はしない。市庁舎前に、レッドカーペットを敷いて舞踏会を開いてしまうところもいい。ウィーンの芸術に対する懐の深さを見せつけられた気がする。